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ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴る。ドアを開けると、予想通りの人物が立っている。懐かしい出来事。
「瑞希ー。遊びに来た」
「悟さ、いったい何してんだよ」
「今日はそのお披露目にきましたあ」
「はっ?」
悟のこの調子はずっと変わらないのだろう。瑞希はよく分からないまま悟を家の中へ招いた。
「おかあさんいる?」
「いるよ」
「じゃあ、外行こう」
今日は悟が来ると分かっていたから、母はわざわざ仕事の休みをとってくれた。まだ二人きりで出かけるのは心配なのだろう。瑞希自身も不安は感じている。
母はすぐに車をだしてくれた。毎晩母の帰宅後に外を散歩する以外は、少し家を出るのにも車ばかり。
「着いたわよ」
たった数分しか乗らなかった。こんな近くに降りるような場所あったかな、などと瑞希が考えていると、悟が後部座席のドアを開けた。母以外に介助してもらうのははじめてだったけれど、難なく降車して白杖を手にとる。
なんか、やりやすい……?
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