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「おめでとう、瑞希」
悟に渡されて、薄めたポカリを飲む。ぷはっと口を離して、そのまま悟に返した。
「悟、お前クビな」
「え……?」
「だから、併走者クビ」
「え、なんで?」
悟はきょとんとして瑞希を見つめた。肩にタオルをかけ、すでに呼吸も整った瑞希は大真面目な顔をしている。
「俺はもう走れる。悟のおかげだ。けどな、ずっとこれでいいなんて思ってない」
悟は瑞希の言わんとしていることを悟った。
「でも、俺は瑞希と……」
「となりじゃなくたって、ずっと一緒に走ってるだろ。俺はブラインドマラソンでパラリンピック目指す」
「おお!」
「だからお前は10000mでオリンピック目指せ。悟は自分の脚で、狙えるだろ」
ぽたぽたと悟の顎から汗が滴り、地面に染みをつくった。
「……分かった。でも俺、やるならマラソンだ」
「なんでだよ。お前は10000mが速いだろ」
「でも、瑞希と一緒に目指したいんだ。42.195キロ」
「そうか……わかったよ。今度はどっちが最初にメダルとるか勝負な」
「そうこなくっちゃ!」
瑞希が突き出した拳に、悟も拳を作ってこつんと合わせる。顔を上げて空を見渡すと、そこには砂浜で見たのと同じ青空が広がっていた。
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