砂浜の感触

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 しばらくすると、ビーサンを突っかけて汗で湿ったTシャツをパタパタとさせながら、近所の売店でガリガリ君を買う。店の前の駐車場で車止めに腰かけて(かじ)る。 「悟、今日はグレープフルーツなんだ」 「なんとなくそんな気分。瑞希はいつもソーダだよな」 「一番美味いから定番なんだよ」 「そうかなあ」  はずれの文字を見てがっかりしたあと、棒をプラスチックの袋に戻してポケットに突っ込む。そしてまた追いかけっこ再開。  遊び相手はお互いしかいなかった。ゲームもおもちゃもなく、遊び道具は自分の脚。ただ二人で走っているだけなのに、不思議といつまでも飽きなかった。  晴れの日も雨の日も、暇さえあれば潮の香るこの砂浜を一緒に走っていた。この生活がいつまでも続くと、この頃の二人はそう信じていた。
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