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「部活終わったのー?」
寮の部屋に戻ると、悟はベッドの上で胡坐をかき、3DSで遊んでいた。瑞希ははあ、と溜め息をつく。
「見りゃ分かるだろ」
「夕飯食べたら走り行こ」
「お前なあ、こっちは疲れてんだよ」
「そんくらいのハンデなきゃ俺敵わないし」
「だから悟も筋トレと体力づくりしろって俺ずっと言ってんじゃん」
「いいからさー走り行こうよ」
「分かったって」
瑞希ははあ、ともう一度溜め息をついた。
もう1年以上、毎日のように同じやりとりをしている。中学まではよかった。部活では一度も勝てなかったが、部活後に砂浜で距離制限なく走っているときには負けていなかった。幼馴染でライバルという存在が嬉しくも疎ましくもあったが、いつまでも一緒に走れるというのはそれだけで楽しかった。
寮の夕食を平らげたあと、部室の鍵を借りてきて着替える。もう恒例となっていて、職員室でも顔なじみだ。
「野球部、今日もまだやってんな」
「今週末試合だってさ」
窓の外から野太い声と気持ちのいい打球音が聞こえてくる。
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