ソーダ味の涙

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 コンコン。病室のドアをノックする音がする。 「瑞希ー」 「悟お前さ、部活ちゃんと出ろよ」  そうは言いながらも、悟が来たことで瑞希は少しほっとしていた。  入院してもう2日になる。慌てて東京まで駆けつけてきた両親には随分と心配をかけた。不安を表に出すと余計に心配をかけてしまうからと、虚勢をはるのにも疲れてきた。  昨日、野球部の1年が謝りに来た。ボール磨きをサボってグラウンド裏でキャッチボールをしていたときに取り損ねた球が開いていた窓から入ってきて、瑞希の頭上の蛍光灯を割ったのだ。幸い、頭の怪我はひどくなく、数針縫っただけで意識もすぐに戻った。検査で脳に異常が見つからなければ退院となるだろう。  瑞希の身体は元通りになる。たった一点を除いて。  なんであのとき頭上を見上げてしまったのか。後悔なんていくらしても遅い。見開いた目に刺さった数々の細かいガラスの破片は、瑞希から視力を奪った。
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