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俺が彼女と出会ったのは、大学二年の夏の終わりだった。
その日、俺は友人のノブアキに誘われて、同じサークルの柚木さんを連れて、三人で海に出掛けた。
ノブアキは前々から柚木さんに気があったらしく、夕方になって「このあと二人きりにして欲しい」なんて言うもんだから、俺はとりあえず焼きそばと炭酸を奢らせて、夕暮れの駐車場で一人寂しく晩飯を食していた。
その駐車場は山の斜面に面した道路沿いにあり、目の前は急なカーブになっていた。
沈みかけた夕陽が眩しかったせいかもしれない。突然目の前のカーブから高級車が飛び出して、駐車場に突っ込んできた。
高級車はそのまま加速を続け、ガードレールを突き破って崖下に転落した。転落する高級車の後部座席で、高校生くらいの女の子が俺を見ていた気がした。
俺は慌ててひしゃげたガードレールに駆け寄り、崖下を覗き込んだ。生い茂る樹々の上に、逆さまの車体が確認できた。
まるで百舌鳥の早贄のように太い幹に貫かれた車体。その光景から、搭乗者の無事はもはや絶望的に思えた。
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