37人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「おい…」
店の奥からまたお爺さんが顔を覗かせた。
「ちょっと休憩するから…」
そして私に気付いたらしく、ニッコリ笑って、店の奥に戻って行った。
おばあさんはそのお爺さんを見送って、またお茶を飲んだ。
「パンの作り方知ってるかしら…」
おばあさんは私に訊いた。
「ええ…家庭科で習った程度ですけど…」
私はそう答えた。
おばあさんはニコニコ微笑みながら頷く。
「小麦を練って発酵させてから焼く。それがパンの基本ね…。その発酵ってのがね、晴れた日、雨の日、春、夏、秋、冬…それで微妙に加減が違うのよ…。そして一番難しいのが、今日みたいな天気の日。晴れでも雨でもない。そんな日が一番難しいのよ…」
おばあさんは私にお茶をすすめてくれた。
私は湯呑を取りすする様に飲んだ。
美味しいお茶…。
最初のコメントを投稿しよう!