あんぱん

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「お爺さんが、こんな天候の日はパンの生地作りに時間が掛かってしまってね。あんぱんのあんこを作る時間が無いのよ…」 「はあ…」 おばあさんは湯呑をお盆に置くと、ガラスケースの向こうに回ってあんぱんを一つ取った。 「だから、今日みたいな天候の日だけは、あんこを私が作るのよ…」 おばあさんは手に取ったあんぱんを手で挟み潰した。 そして半分に割り、その半分を私にくれた。 おばあちゃんと一緒だ…。 私は半分のあんぱんをじっと見つめた。 「つまり、こんな日のあんぱんのあんこはおばあさんが作ったモノって事ですね…」 おばあさんは微笑みながら無言で頷いていた。 そうか…。 それがあんぱん日和の正体か…。 おばあさんは私に近くに寄る様に手招きする。 「パン作りはお爺さんには敵わないけど、ジャムもあんこもクリームもまだまだ私の方が美味く作れるわ」 おばあさんは少し胸を張って言った。 私はそのおばあさんの姿を見て笑った。
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