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ガランとした食器棚の中には、マグカップと平皿が一枚だけ。自炊をしない男の一人暮らしならそんならものだろうと言われればそうだが、元々は対になっていたことを知っている俺から見れば、傍を失って淋しそうに佇んでいるように見える。 三ヶ月前までこの部屋に住んでいた彼女が、それぞれ持って行ってしまってからずっとそうしたままだ。 その食器たちを取り出し、冷凍庫を開ければポツリと取り残されたように置かれた冷凍パスタ。 彼女が、美味しいからと薦めてくれてから食べるようになり、いつの間にかこの冷凍庫に常備されるようになった。 家事という家事は、どれも苦手だった彼女は、中でも料理は俺以上に出来なかった。 しかし、その事に気付いてないのか、得意そうにこの冷凍パスタを食卓に出して来ては、大層な自慢料理のように振舞ってくれた。 初めはそれにいろいろな意味で戸惑っていた俺も、初めて食べるそのパスタが想像を大いに超えて美味しくて、たしかに慣れない俺なんかが無理して茹でて変なパスタソースを掛けるよりも美味しいと納得したのだ。 女々しいよなぁ そう思いながらも、取り出した皿に冷凍パスタを乗せて、レンジで温めている間に、マグにインスタントコーヒーを注ぐ。こんな状況で食べる冷凍パスタは、今日もやっぱり美味しかった。
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