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ダンボールの蓋をガムテープで閉じ、ハッと短いため息を吐いて、ふと窓を見る。 床に膝をついた姿勢で見える風景は、薄水色の穏やかな春の空で、ぽかぽか陽気のこんな天気の良い日に、なんで一日中引越しの準備に追われなければならないだろうと思う。 来月からの海外赴任が公になってからと言うもの、送別会だなんだと、理由をつけては飲み好きの輩に付き合わされて、連日連れ回されていたもんだから、全くなんの準備も出来ていない。 ただでさえ、引き継ぎや挨拶回りで忙しくて、時間がないと言うのに……、と言いながらも、誘ってもらえるのは嬉しくもあるのだけれど。 ただ、現実問題として、船便で送る荷物は、今日中にまとめておかないと、明日の夜には集配に来る。空輸で送れる荷物は会社から支給される枠があるため、それをオーバーすると手出ししなければならなくなる。タイまでの送料なんてバカにならない。 なのに、見渡せばあちらこちらにダンボールと、今から入るべく待機している荷物たちが散乱しており、一向に進まない荷造りに嫌気がさして来たところだ。 休憩がてらに、遅めに昼食を取ろうと台所へ移動する。     
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