入学をしてから僕等は。

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一口が自分の口内の許容範囲を考えずにカツ丼をモサモサ食べている。まるでハムスターの様だ。口周りに微かに油が付いており、リップを塗りたくった女性のようだ。全く、見かけによらずにガツガツいってしまうのは何時まで経っても治らないな。求めていた出来事が合ったというのにキス場面を無表情で受け止めてから、残りのご飯に手をつけている。なにか不満でもあったのだろうか。 「…んぐ。カツ丼の美味しさには敵わないんだ。」 「分かるけども。」 わかるわかる。今まで食ってきていたご飯達が掠れるレベルだもんな。ちょっとした恐怖だ。だが手は止まらない。 「確かにキスシーンはそれはそれは素晴らしいものではあったけど、あの出来事により今後の主人公の試練を考えると、どうしても熱も冷めてしまう所があるんだ。」 「あれだけの注目の的にされりゃぁどうなるかなんて分かりきってるけど…。」 しかもモジャメガネは一度見れば、そうそう簡単に忘れることが出来ない見た目ではあるからな。今日の午前中から既にその兆候は現れ始めているし。 「主人公の味方につく気は無い。読者目線なだけだ。」 「なるほど。」 別に彼とは友人でもなければ、知り合いでもない。同じ学園に通っているだけの存在である。言っていることは相違ないはずだ。 だが、ドヤ顔している所悪いが、口の端に米粒が一つ付いているぞ。     
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