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そんな良い施設内の一室である慶の部屋。まだ荷物は全て開封していないらしく幾つかダンボールが見当たる。俺も一緒だ。カーテンはシックに藍色単色で制服を匂わせる。幾つか日常生活に必要な物が出されているだけで他には特に手はついてはいなかった。まだ制服に身を包んでいた彼は恥ずかしげも無く、ダンボールから同じ様なジャージを取り出して着替えを始めていた。俺は同性だし特に思うことも無く、部屋の主人をよそにベットの上に横になりながらその様子をぼーっと眺めていた。此方に背を向けて着替えている。日に焼けていないから真っ白な肌。ハーフとはいっても、見た目が完全に向こうの人だから日本人だとは言わなければわからないレベルだ。服の下の肌も同様らしい。父親の遺伝子強いな。シミひとつなくて、綺麗なものだ。無駄な贅肉もなければ、運動をやっている訳でもないので最低限度の筋肉しかない。細身だ。腰も高くて羨ましい。
「あと三人特待生いるみてぇだけど、慶知ってるか?」
「んー、多分この人なんだろうなぁって言うくらいだな。」
「なんか、あの空間だと話し掛けにくいんだよ。」
「仲良しだからな、五人以外は。」
「…だな。」
「寂しいか?受験しなければ良かった?」
着替えが終わり、室内に用意されているハンガーに制服を掛け終わると、クルリと此方に身体を反転させた。同じ様なジャージじゃなくて、同じジャージを身にまとっている。中学の時に使用していた体育着だ。中は各自違うものだけど。中学校名が腕の所に刻まれている。物が丈夫で良いからつい着てしまうのは、やっぱそうだよなぁ。なんて思いながら、彼の顔を見上げた。ゆっくりと此方に近づいてきて、シングルベットの空いているスペースに腰掛ける。下を見るからか、横髪も前髪も重力に従い音もなく下に流れた。ブルーグレーが俺を捉える。睫毛も髪の毛と同じで金色だ。しかも長い。寂しいか、と聞いてきた本人が寂しそうな顔をしている。別にそんな顔をさせたいがために話を振った訳では無いのに。早とちりだなぁ。それだけ気にしてくれている事に心が弾んでしまう自分は、もう末期なのだろうか。
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