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長い長い入学式だった。暇過ぎて視線の範囲内で館内を見回していた。式場施設は天井が高く、その部分に細やかな壁画やステンドグラスに着飾られていた。ロココ調というのだろうか。開けている空間ではあるのだが、年季が入っており重圧感が感じられる。黒崎家は宗教には入ってはおらず、教会なんて行ったことがない。テレビでたまに観る程度だ。だが、映像の向う側に建てられていた物よりも何倍も此処は綺麗に映るのだ。多分、ちゃんと自分の目や肌で感じたからそう思うのだろうが、やっぱりどうやっても素晴らしいなぁと感嘆してしまう。惹かれてじっと見ていたが、それもずっと見られるわけでもなく校長や理事長からの祝辞を長々と聞いているしか他無かった。
あれは何だったのだろうか。
既に終わった入学式の情景を思い返した。現時刻は十一時だから二時間はやっていた事になる。入りたてなのだから、校歌なんて歌えるはずも無く聞き流し、祝辞コーナーへ。校長、理事長のそれは別に構わない。半分寝ていたが。そう、その後だ。生徒会長。名前は案外普通だったのは覚えている。問題なのは見た目と内容だ。赤い髪に、着崩した制服。そして…。
『ようこそ桜華学園へ。現生徒会会長の相野谷伊織だ。この学園に入学したということは、俺様達の偉業を目の当たりにすることが出来るわけだ。喜ぶがいい。』
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