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ペンダントはゲランから南東のエストリア大陸の方に光を放っていた。一行はエストリアを目指すことに決めて港の方へ急いだ。
ゲランの乗船場は貨物船だらけ。
ムヘーレス大陸の交易地だけあって、港もすごい賑わいだ。
「え?エストリア行きの船はもう出航した?」
リーディが乗船券売り場で思わず口にする。
訊くと、1か月先まで客船が戻らないという。
「困ったね…。タイミングが悪かったわ。」
「いずれにせよ、海を渡るしか方法はないものね…。」
一行は途方にくれながら一旦乗船場を出て、
そして港を歩きながら相談し合った。
「あまりここで無駄な時間は過ごしたくないよな。」
「魔性がいつ襲ってくるかわからないし。」
周りに船はたくさん停泊しているが、どれも貨物船ばかり。
エストリアまでたどり着くのに、少なくとも小一か月は船旅でもかかる。 究極の選択で貨物船に頼んで乗せてもらう手もあるが、客室が無い船だと1か月はさすがにキツい。
ステラ達は再び途方に暮れた時、キャロルが急に目線を遠くに移した。
何かに気が付いたのか?あとのふたりも同一方向を見ると、女性がぐったりと座りこんでいる。顔色が蒼白で具合が悪そうだ…。
「大丈夫ですか?」
キャロルは気が付くや否や駆け寄って、女性に寄り添う。
「だ、大丈夫です…少し気分が…。」
キャロルはすぐに回復の魔法を唱え、
日陰まで女性を支えて連れて行った。
―あ、この人…妊婦さんだ。
ステラは婦人の目立ったお腹を見てすぐに気が付いた。
「ありがとうございます…ちょっと気分が良くなったので港を散歩していたのですが…。」
「アマンダ!」
声のした方を振り返ると、身分の高そうな出で立ちの紳士が駆け寄ってきた。
「あなた…。」
「また船から出て。大切な身体なんだから、無理をしては駄目だ…。」
「ごめんなさい、気分がさっきまで良かったものですから…。でも大丈夫。この方が助けてくださったの。」
アマンダと呼ばれたその女性は、キャロルの方に笑いかけてそう答えた。
「旅のシスター…ありがとうございます。」
どうやら女性の夫らしきその男性は、
キャロルに気が付き会釈し、お礼を言う。
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