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確かに田舎は好きだ。でも、こういう事件絡みで行くんじゃなくて、純粋に旅行として行きたかった。複雑だ。
「……わかったわかった。取り敢えず、今日は帰って寝てくれ」
頭を抑えて言う。すると、伊月は何を思ったか、窓を開けた。
「わかった。じゃ、また明日迎えに行くよ」
そう言い残すと、伊月は窓から勢いよく飛び降りた。きっと、俺の心配なんて彼にとってはどうだっていいのだろう。
大きめのリュックサックを押入れから取り出し、数日分の衣服を詰める。きっと長期戦になるのだろうから、使い回しのできるような服にしておこう。
最後に、姉さんから借りてきた本を二冊、詰め込む。何度だって読み返して、何度だって忘れてしまおう。
明日の支度を軽く済まし、俺は再度眠りにつこうと、ベッドに潜り込んだ。
探偵と物書きと学生。どれが本業なのか、時々わからなくなる。
立白伊月の態度の変わりよう。どちらが本物なのか、時々わからなくなる。
姐さんの死は自殺だったのか他殺だったのか事故だったのか、時々わからなくなる。
いや、全て分からないというのが、正解なのかもしれない。どうせ考えてもわからないこと。答えのない問題を解いているような、焦燥と虚無感。
もう、なんだっていいような気がしてきた。存在価値とか理由とか、もう、どうだっていい。必要とか不必要とか、考えたくもない。 でも、考えていたい。……なんだそれ。
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