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村人たちは、自分たちがどう行動すべきなのか、わからなかった。
川の一件から、二ヶ月が経った頃。生贄を出す、出さないの話は、もう消えかけようとしていた。また昔のように大勢が死ぬのでは、なんて噂もあったものだから、村人たちは安堵し、床に入ることができるようになりつつあった。
山の木々は紅葉し、日は短くなり。桜紅神社の巫女が、早朝から石段の掃き掃除をしていたところ、一人の男性が座り込んでいたという。近頃は気温も下がりつつあるものだから、巫女は男性の具合を心配した。
「そこの方、もう5時になりますよ」
返事はなかった。寝ているなら起こさねばならないと思い、箒を石階段にそっと置き、男性の顔を覗き込む。
巫女は小さく悲鳴をあげて後ずさりし、数段上に引っかかった巫女服の裾を踏んでしまい……。
その日の昼頃、参拝に来た老婆が見たものは、階下で手足があらぬ方向に曲がって巫女服を真っ赤に染め直した巫女と、両目と心臓がくり抜かれ、俯いて座っている男性。男性を刺し殺した犯人は、川で腕を発見した老父だった。彼は逮捕時、突然笑ったり泣いたり、情緒不安定だったそうな。
その数日後、村に一つしかない小学校の校庭に、子供の両足が、血塗れの状態で置かれていた。教師が処理する前に、大多数の生徒が目撃してしまった。被害者はその小学校の三年生の少年。犯人は、巫女と男性の死体を発見した、老婆だった。老婆も、老父と同じく、情緒不安定であった。
その後、空き期間はランダムで、次々に人体の一部が欠損した遺体が見つかるようになった。犯人は子供から老人と、規則性がない。勿論、被害者も。いずれも犯人は情緒不安定になっており、会話すらできないというのがほとんど。ただ、一つの共通点として、現場にはいつも赤く細い糸が、一本だけ落ちている。
村人たちは生贄を出さなかった我々への、鬼の祟りだと言う。 いつしか、連山村は国の立ち入り禁止区域になりつつあり、村人は山を越えることを、強制的に禁止されてしまった。
政府はメディアでも報道・拡散も禁止しており、世間から隠すことを徹底しているようだ。政府曰く、
「神経に直接干渉する、未知のウイルスの可能性も」
とのこと。
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