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「危ないなあ」
幸治は半分砂に埋まっている串を見て言った。
色のせいで見分けがつきにくくなっているが、割り箸も何本か転がっているようだ。
それを拾おうとした赤座を幸治が止めた。
「キリがないですよ。それに僕たち、何も持ってませんし」
「でも……」
「今日はこれを見に来たんですから、ゴミ問題は後日に考えましょう」
幸治は看板を指差した。
破損具合や根元の腐食など、建設課ならではの目線で状況を確認した赤座は、憮然として息を吐いた。
「経年が原因ではないですね」
そんなことは僕でも分かる、と幸治は言いそうになった。
「これなら予備があるので、すぐにでも設置できますが……」
赤座は唸った。
「壊されるために設置するのはためらいますね」
「どういう意味ですか?」
「これ、金属の棒か何かで叩き割った跡ですよ。板は二重に張ってますから、ボールが当たったくらいじゃこうはなりません。ボウリングの球ならできるでしょうけど」
本来なら被害届を出してもいい、と彼女は言った。
いつ壊されたかも分からないし、犯人が捕まるハズがないと幸治は考えるのだが、赤座の気持ちはよく分かっていた。
「でも放置というのもマズいですよ。電話をくれたおじいさんに僕、すぐに直しますって約束しましたし」
「ええ、ではとりあえず予備で対応しましょう」
赤座の胸中は複雑だった。
大切に扱えば10年以上は持つ看板だ。
それを意図的に壊されたとあっては、自分たちの仕事の邪魔をされているようで気分が悪い。
そもそも物を大事に扱わないこと自体、生真面目な彼女には理解できなかった。
2人は念のため他に問題はないか、公園を見て回った。
ベンチにひび割れはないか、遊具に瑕疵はないか。
こればかりは幸治だけでは分からなかったから、赤座に頼りきりになる。
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