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帰宅した美子がひどく憔悴しているのを見てとったミサキは、それとなく理由を訊ねた。
はじめこそ言葉を濁していた美子だが、隠すことにもいくらか疲れていた彼女は起こったことをそのまま伝えた。
「殺されたらしいの。残酷なやり方で」
彼女がこの事実を知ったのは、及川奈緒を通してだった。
三日坊主で終わると思っていた美子が活動を続けていることで奈緒も見直し、それなりに親しい付き合いができるようになっていた。
そうした矢先での出来事だっただけに、美子にはショックが大きかった。
「虐待ってことだよね、それ」
静かに憤るミサキに、美子は頷いた。
しかしこれは控えめな表現だ。
「なんでそんな残酷なことができるの?」
「猫が嫌いな人とか……そういうことをする人も世の中にはいるのよ」
そう珍しい話ではない。
報道されているものだけでも、何匹も虐待した末に殺したという輩もいれば、里親を名乗って殺すために保護された猫を引き取る者もいる。
その方法もさまざまで、床に叩きつけるとか四肢をはさみで切断するというものから、中毒を起こす食べ物や薬品を与えるというケースもある。
「犬や猫を虐待するような人はね、いつか動物じゃ満足できなくなって、最後は人間を手にかけるものなの。だからそうなる前に捕まえなくちゃいけないの」
美子が恐れるのはこれだった。
特に子どもが狙われる事件は後を絶たない。
抵抗されにくいか、たとえされても力の弱い小学生が標的にされることが多いが、中学生だって未成年という意味では同じだ。
ミサキはさして体格が良いほうでもないから、犯人に目をつけられる可能性もある。
「そういう問題じゃないじゃん」
だが当の娘は考え方が少し違った。
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