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4 子どもたち
戸塚大虎はよい子だった。
腕白で勉強よりも動き回ることのほうが好きな少年だったが、手が付けられないということはない。
大人の言うことはきちんと聞けるし、無暗に反発したりもしない。
かといって従順かといえばそうではなく、彼なりの倫理観や価値観に照らして、それが間違っているときには、たとえ教師が相手であろうと食ってかかる胆力もある。
その芯の強さに可愛げがないと敬遠する大人もいるが、ほとんどは今時にしては珍しいしっかりした子、と好意的に捉えている。
今年、小学6年生になったことで少しは落ち着きも出てきたが、勉強が苦手なのは相変わらずで、はたして中学でやっていけるのかと両親は不安でしかたがなかった。
そんな親心も知らず、彼は授業が終わるなりランドセルを肩に担いで学校を飛び出した
数名の友だちを率いているのは、彼が呼びかけたからではない。
このくらいの年齢だと勉強ができるよりも、スポーツマンタイプのほうがクラスの人気を集めやすい。
活発な性格がそうさせるのか、彼の周りには自然と同級生が寄ってくる。
この日も仲良しの一井、船根を伴って公園に直行する。
遊びに行くなら一度帰宅してからにしなさい、と母は口を酸っぱくして注意しているが、時間がもったいないと無視していた。
「今日、何する?」
まるで取り巻きのように大虎といつも一緒に遊んでいる一井は、決まってこう声をかける。
誰が言いだしたワケでもないのに、気付けば大虎がリーダー格になっていた。
本人にそのつもりはないのだが、彼は教師たちからも信用されていて、しかも年齢のわりには体格がいい。
男子のヒエラルキーはおおよそ喧嘩の強さ――この場合は殴り合い――が全てを決する。
武術でもやっているかのような彼の背格好だと、何もしなくても男子界の上位に食い込めるのだ。
つまり一井はお伺いを立てたようなものだが、そこに打算はない。
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