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冷蔵庫に、納豆がなかったことを思い出し、レジの列から抜け出した。
わりあい混雑しているのに、他のレジを開けようとしない店側の真意はわからない。そのわからなさが並んでいる老若男女の間に、苛立ちの渦を巻かせたのであった。
その渦の重苦しさに息苦しくなり、一旦脱出しただけなのかもしれない。たしかにその苛立ちはよくわかる。だれもが時間に追われているのだろうし、忙しくしている。忙しい状態に揉まれることが生活なのだろう。
他人の悪意や憎悪に晒されずに生きていくことはできない。そうだとしても、極力避けて通りたいと考えることもまた、悪意や憎悪を抱くこと同じくらい、不思議な心境ではないだろう。
威嚇は、闘争前の儀式ではなくて、闘争回避のための力比べなわけだし、獣でさえ知っている、無駄な負傷をしないための護身術だ。
その威嚇の磁場を感じたのだ。それが苦痛になり、列から抜け出した。おかげで納豆を思い出せたのだ。
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