そこそこ日和

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ツツツと、おろしだれ納豆の前に立ち塞がった主婦がいた。赤札が見えなくなった。もうすこしで届くというところで、立ち止まらざるをえなくなったのだ。 その主婦は、おろしだれ納豆をみて、徐に2個の赤札納豆を手に取り籠に入れた。赤札納豆の残りはひとつ。主婦から2歩下がった辺りで待機しつつ、まだ残っていることを横目で確認していた。 この視線に気づいたのか、主婦がちらりと振り向いた、一瞬だけ目が合った。すると主婦はすぐ向き直り、こちらの狙いを知ってか知らずか、最後の一個も籠に入れた。 そして陳列棚の続きに並んでいる、他の食料品を眺めているかのように姿勢を保ち、こちらに背を向けたまま立ち去った。 陳列棚から赤札つきの納豆がなくなってしまったのだ。
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