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彼女が手みやげを持ってウチに来てくれたのは、もう先月のことになる。
「中目黒にある人気のお店なんですけど、普段は並んでてなかなか買えないんです。今日は朝早めだったから、もしかしたらと思って寄ってみたんですけど、並ばずに買えて!
チーズケーキ。お嫌いですか?あ、わたしも一緒に食べていいですか?」
そう言って少しはにかみながら、いそいそとケーキの箱を開けていた。
彼女は広告代理店の営業さんで、僕はそこから仕事をもらっているCMプランナーだ。
先輩のプランナーと一緒に数年前に小さな会社を立ち上げて、都心を少し外れたところに小さいオフィスを構えている。
彼女の先輩にあたる営業さんから、会社の立ち上げ以来ちょこちょこ仕事をいただいていたのだが、その先輩さんは順調にえらくなり忙しくなって、打合せもだいたい彼女にまかせるようになっていた。
打合せ場所はたいがい彼女の会社だったのだけれど、その日はたまたまウチのオフィスの近くで別の打合せがあるということで、「せっかくなのでオフィスもぜひ拝見したいです!」と、それで弊社に来てくれることになった。
で、冒頭のチーズケーキである。
昭和モダンのおしゃれ感をまとったシンプルなケーキが、彼女の、ミーハーと洒脱の間を揺れ動く感じを、うまく表現している気がした。
おいしくいただいて、その後の打合せにもお茶会の空気を残した彼女には、若いのにさすがは大手広告代理店、と思わされた。
で、今度はぼくの番になった。
新しく仕事のお声がけをいただいて、ぼくは彼女のオフィスを訪れることになった。
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