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もう何十回も名乗っているのに、書き出しは未だにこうだ。気の利いた挨拶文がぱっと頭に浮かばない。そしてサービスデーにしか鑑賞しない映画のように心揺さぶられるような事などない日常を、二時間ドラマのようにありきたりな展開さえ面白いと思わせるような文才もない文章を、印刷された薄い線の上に乗せていく。
たとえばそれは空に浮かぶ妙な雲の形であったり、食堂で聞いた他人様の嫁姑問題であったり、最近食が細くなってきたけれどどうすれば肉が食べたくなるでしょうなんてどうでも良い相談であったり。
普段口数の少ない私とは対照的に、流れるインクは饒舌に言葉を語っていく。
しかし残念ながらその内容は、瑣末で心底どうでも良い事柄しかない。
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