島田魁の夢幻

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三月も終わりに近づいているというのに、少し肌寒く感じる夜。 年老いた身体に加え、持病の喘息が出て先ほどまで寝ていた島田には堪えるのか、巨体をぶるっと震わせた。 暫く体調が優れず、西本願寺の守衛の仕事を休んでいたが夜になると酷くなる咳が今夜は嘘のように一つも出ない。 ――ずっと床に就いていたから良くなったのだろう―― そうなれば、いつまでも仕事を休んでいるわけにはいかない。 それに、少しは鈍った身体を動かすのも悪くない。 そんな思いから今夜は急遽、自主的に守衛にあたっていた。
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