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部屋に近づくに連れ、人の話し声が聞こえてきた。
五、六人はいるだろうか。
その声は潜める様子もなく、だんだんと島田の耳にも辛うじてではあるが内容が聞き取れるものになった。
(「・・・の腹の・・・」「久し・・・会って勘弁・・・左・・・さん」「・・・方さん・・・お団子・・・」「・・・はは・・・」)
聞こえてくる声は目の前の障子の向こうからのはずだが、何故か空から降ってきているように感じる。
息を潜めるどころか、楽しそうに談笑する声に島田は警戒するのを止めた。
いつの間にか流れていた涙をぬぐい、障子を開ける。
一斉に島田の方を向いた顔はどれも懐かしいものだった。
島田がここで住んでいた頃、毎日のように合わせていた顔。
あれから時を経て自分だけずっと遠くへ来てしまった気がするのに、彼らは変わらずあの頃のままここに、ずっと側にいた。
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