0人が本棚に入れています
本棚に追加
10
目がしょぼしょぼする。もちろん原因は昨夜の心霊現象だ。
廃墟特集を見た後、僕は深呼吸をして体を落ち着かせた。興奮したままだと眠れない。少しでも心霊現象を体験する時間を短くしたかったのが理由だ。
キッチンの物に取り憑いていれば良かったのだが、事はそう上手くいかない。当たり前のように声を発する赤子の霊。また少し成長したのか、今度は何かを引きずる音が聞こえてきた。朝になって確認すると、引きずっていたのは昨日まで着ていた僕の上着。霊が触れた服だ、これはもう捨ててしまおう。
はぁ……と溜息をついてゴミ袋に服を入れる。数年前に買った服だから良いが、新品だったら一週間は立ち直れなかっただろう。今度から床に物を置くのはよそう。
ともかく、キッチンにある物には憑いていないことがわかった。次はリビングだ。引っ越す前の家だったら僕や好美の趣味の物でいっぱいだったが、今はしっかり整理整頓されている。これなら楽にすべて外に出せる。
手をつけるのは早くて明日。今日は寝不足だから好美の実家に帰ってゆっくり休む。キッチンの物に取り憑いていないのは残念だったが、今は心霊現象の根本的な原因を見つけられそうなので、気持ちはだいぶ軽い。
物置にあるキッチン道具を家の中に入れて、出勤するために車に乗る。ああ、早く五郎さんに廃墟について知りたい。
いつもより早めの出勤は車や人が少ない。駐車はスムーズ、着替えは腕を伸ばしても大丈夫。これなら毎日早く来ても良いかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!