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テーブルにはお酒とおつまみが大量に置かれていた。
「すまんなぁ、これしかなくて」
「いえ、ごちそうになります」
好美に五郎さんの家に泊まると電話した後、どこかに寄り道することなく五郎さんの家の呼び鈴を鳴らした。出迎えた五郎さんの手にはビール瓶が握られており、これで一杯やろうと僕を誘った。
まずは乾杯、そしてグッと一気に飲む。この時の喉越しがたまらない。やはり最初はビールに限る。おつまみは定番の枝豆、からあげ、スルメだ。これを食べながら飲むのは人生の楽しみだと言って良い。
良い感じに酔っ払ってきた頃、ここに僕を招いた理由を思い出しのか、五郎さんは急に廃墟探索の注意点を話し始めた。そろそろ聞こうと思っていたので良いタイミングだ。
「まずはなぁ、服装だ。動きやすい服を着るのはもちろん、長袖を着ると良い。植物の棘や虫などで怪我をするからな。併せて救急セットも嵩張らない程度に持っておけよ」
急いでメモを取り出して忘れない内に書く。多少字が汚いが、自分さえ読めればそれで良い。
「行くのは昼間が良いな。夜だと周りが見えなくて危険だ。廃墟内には穴が空いてる場所もある。うっかり落ちて怪我をしたら大変だ。打ち所が悪ければ命にかかわる」
誰もいない廃墟で死ぬのは嫌だなぁ。夜に行けば誰にも見られないと思ったが、そんなことよりも自分の身の方が大事だ。ここは五郎さんの言う通り昼に行こう。
「あとは、廃墟に置いてある物には触らない。怪我の元になるし、誰も手を付けないからこそ風情がある。ああ、それと騒がないこと。誰かに見られたら不審人物で通報されちまう」
騒ぐのも駄目か。でも幽霊を見たら絶叫してしまうかもしれない。口にガムテープを貼っておくか? メモに小さくガムテープと書く。うーん……口で呼吸できなくなるのはつらい。走った時に鼻でしか息ができないのは苦しいな。マスクにしておくか。
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