0人が本棚に入れています
本棚に追加
五郎さんから話を聞いた後は当日の服装や持ち物を考えることに専念した。しかし、眠い目をこすりながら考える案はどれも非現実的だ。全身タイツで廃墟に行こう、心臓が止まった時のためにAEDをリュックに入れようなど、寝惚けたことばかり書いてしまう。それを見た五郎さんは大笑いをしている。
「植田、もう寝よう。明日も仕事なんだから体力がないとぶっ倒れるぞ」
「うう~ん……まだ、もうちょっといけますよぉー……」
「俺から見たらだいぶヤバいぞ。ほら、毛布だ。これ被って寝ろ」
あと五分ぐらいなら大丈夫だ。しかし、五郎さんは僕の言葉を無視してバサッと毛布をかける。
暖かい。なんだか眠たくなってきた。もう、何も考えられそうにない。
「ああ、当日は俺もついてくからな……って寝ちまったか? ま、明日また言えば良いか」
「う~ん……?」
五郎さんが何か言っているが、残念ながら眠気と酔に支配された頭では理解することができない。
そういえばあまりお酒を飲むなと、付き合ったばかりの頃の好美が言っていた。判断力や理解力が低下して支離滅裂なことを言うし、自分が話した内容すらも覚えていないから、らしい。今は言われないから諦めたのかもしれない。
僕自身はは酒には飲まれたことないと思っている。しかし、相当酷い酔い方をしていると聞かされたことがある。
控えるべきか、欲望のままに飲むか。そんなことをぼんやりと考えている内に、だんだん意識が遠のいていく。
もちろんその流れに抵抗はしない。ほどなくして僕は夢の世界に引きずり込まれていった。
最初のコメントを投稿しよう!