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「シンが近親交配によって生まれた存在ではないと言い切ることはできないだろう。これまで保護した純血種はすべて、純血種の違法な売買のために若年かつ非常に近い血縁で繁殖させられた者たちだった。その後彼らはどうなった?」  俺以外の研究員へ問いかけるような素振りを見せる。 「保護した時点で死亡していたか、保護して間もなく死亡したか。そのいずれか、だ」 「ですがその兆候は――」 「明日、シンが生きているという確証はあるのか? 君が純血種の生命についてすべてを理解しているというのなら、信じてやってもいいが」 「それは……」 「あの」  振り返ると、灰谷が椅子から腰を浮かせていた。驚いたことに蔦川は灰谷を叱責することはなく、「なんだ」と苛立ち混じりに言った。灰谷は背筋を伸ばし、資料を手に前に出る。 「シンには、発情期の兆候が見られません」 「それがどうした。まだ保護して三日だ。時期が来ていないというだけだろう」 「あ、いえ……これまでに発情したという形跡がみられないんです」 「なんだと?」 「灰谷、それは本当か」  二人のアルファに詰め寄られるような形になっても、灰谷は肩をすくめるだけだった。     
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