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 シンの目が丸くなった。俺の頭の上に現れた耳を凝視している。が、すぐに耳は引っこめた。普段獣化することは滅多にないからか、俺は基本的には人の姿の方が楽に感じている。  子どもの頃は、感情の昂りで獣化することを制御できていなかった。それほど、獣人としての性質が強かったのだろう。身体の一部でも獣化できる者は、現代ではそれほど多くない。大人はともかく、子どもは特にその異質さに敏感だった。異質ではあるが、力がある。同級生が怯えた表情で俺を避けていったのは、本能的なことだから仕方がない。  普通に暮らしていれば獣化が必要となる場面はほとんど存在しない。もちろん、多くの場合は感覚器官が鋭くなるため、それを生かした職業につくことはできる。いずれにせよ、制御を学ぶことは重要だったから、父親は幼い俺を厳しく指導した。  突然コツをつかんだのは小学校を卒業する前だ。それまでの苦労が嘘のように、感情に左右されずに獣化を抑え込むことができるようになった。中学生になるときには、ほぼすべての子どもにアルファ、ベータ、オメガの三性が現れており、小学生のときとは反対に、アルファであるというだけで勝手に人が寄りつくようになった。小学校時代の同級生すら、手のひらを返したように態度を変えた。     
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