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自分で意識したよりも低く、強い声が響いた。シンの目が、弱く震える。虚をつかれたような表情で固まっていた。俺の苛立ちはすぐさま後悔に取って代わった。シンというオメガを、無意識に従わせるような愚かなアルファの振る舞いをするつもりはなかった。
「悪い、シン。俺は――」
焦点を引き戻したシンは、静かに首を振った。
「サカキの言うとおりだ。ダディは、もういない。おれはサカキの言うとおりにするよ」
なにかを諦めたような表情だった。
「それで、なにをしたらいい?」
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