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「でも、できない。どうしたらいい?」
俺の胸元のシャツを掴む。必死だった。強い願いが全身から伝わってくる。俺は言うことを聞かなければ約束は無効だというような、そんな脅迫じみたことをしたつもりはない。恐怖を糸に、操り人形のように従わせたかったわけでもない。シンが感情を犠牲に何かを差し出さなければならないようなことをさせるつもりか?
だが同時に、薄汚れた欲が俺にささやきかける――『必要なことだろう?』
「シン、これは汚いことではない。怒るようなやつもいない。怖がらなくてもいいんだ」
顔を上げたシンの唇に触れる。瞬時に身体がこわばり、胸を押された。両手で頬を挟み、左右にさまよう視線を捕らえる。
拒絶を見せればすぐにやめるつもりだった。すべての神経を研ぎ澄まし、シンの反応をうかがう。だが、重ねた唇はやわらかいままだ。舌で隙間をなぞり、吐息とともに緩く開かれた中へと侵入する。
薄い肌のつめたさとは反対に、シンの咥内は驚くほど熱い。あの<匂い>を凝縮したような、しびれるように甘い唾液が舌に絡みつく。
「ふ……んっ……」
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