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「あ、ああ……すみません。結果、もう一度出してきましょうか」  どこか取り繕ったような口調で笑みを浮かべる。 「いや、基本的なことだけでいい。オオカミ族のアルファというのは本当か?」 「ええ。純血種というのも間違いありません。しかも……」  言いよどむ灰谷に視線で先を促す。 「シンとは四世代前に共通の先祖がいます。こんなことって、あるんですね」  オオカミ族の純血種、それも血縁のあるアルファとオメガが生きた状態で同時期に保護される。奇跡のような出来事が立て続けに起こるのは、吉兆なのか――  医療スタッフが二人、大きく息を吐きながら部屋から出てきた。 「容体は安定しました。今わかっている範囲の傷だけであれば、しばらく安静にすれば回復するかと」 「よかった」  ほっと息をつく灰谷にスタッフが微笑み、会釈をして去って行った。 「まだ他にも純血種が近くにいるのかもしれないな。話を聞くことができれば、居所がわかるかもしれない」  めずらしく反応がないのが気になり灰谷を見る。ガラスの向こう側を見ていた灰谷は俺の視線に気づいたものの、あいまいに返事をしただけだ。顔に疲れた影がかかっている。だが気がかりに思う間もなく、別の研究員に呼ばれて行ってしまった。     
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