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合法的にリンの手に触れられるのは願ってもないことだ。
わたしはもにょもにょした違法的な思考を打ち切る。
短編集をわきにおいて、長机ごしにリンの手をとった。
柔らかいし、華奢だし、白いし。
「ツメ、よく見て、丁寧にしてね」
「うん、ええと……あっ」
わたしはいったん手をはなして、ツメ切りを準備した。
気がはやって、さきにリンの手をとってしまった。
違法行為が見抜かれていないか、顔をうかがう。
……大丈夫そうだ。
「いくよ」
わたしはぱちんぱちんとリンのツメを切った。
やすりで多少磨く。
「これでいい?」
「うん、合格」
わたしはほっとした。
リンは小指をグーにしまって、薬指だけを立てた。
「わ、器用!」
生まれてこの方、そんなふうに薬指を動かせる子を見たことがない。
そう思わせる、なめらかな動きだった。
「こういうのって生まれつきなんだって」
「へえ」
わたしは自分の手で試してみたが、やはり薬指は上手く動かせない。
どうしても小指が一緒に動いていしまう。
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