短い恋と長い失恋

出会いから終わりまで

夢のせいか今日は朝から土砂降りだった。テレビをつけると、マンホールから噴水のように水が溢れ、アナウンサーを見下ろしていた。どうやら大きな台風が日本列島を覆っているらしい。父に送ってもらおうと思ったが、どうやら先に出て行ってしまったようだ。
「この雨の中を行くのか。」
僕はため息を吐き、速やかに準備を始めた。

雨は先ほどより強くなっていた。傘に当たり、飛んだ雫は小さな海の中に埋もれていった。
この《感覚》は忘れていたものだ。昔は当たり前のように感じていて、今じゃほとんど感じられない子供だけの《感覚》。
今の自分を囲むものを忘れそうだ。忘れそうなだけで、本当はさらに強く僕の心を蝕んでいる。
あの時、僕と同じように殴られていた彼。彼はどう感じたのだろうか？屈辱か？もしくは劣等感だろうか？その両方の可能性だってある。
僕がもう何も感じないのはどちらも無いせいだろう。
気分が悪い。来た道を戻る足は先ほどより早かった。