出会いから終わりまで

2/12
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 ここでいう雲の上の人と言うのはもちろんそのままの意味ではない。遠すぎて見えないことを指す。目の前の少女は僕のような人間とは絶対に交わることはない人だ。そんな人が僕なんかを心配しているのか。  念のため周りを確認し、彼女の方を向き直る。 「傘はあるから大丈夫だよ。気にしないで。」  彼女は少し考える動作を見せて、僕の目を見る。 「じゃあ一緒に帰ろう。」  僕にとって宝物のような記憶はここで終わっていて、この先のことは気まずかったとことしか覚えていない。こんな夢を繰り返し見るほど、僕は惨めでみっともないと思う。だから違う自分を夢見て、毎日のようにこの夢を捨てる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!