出会いから終わりまで

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放課後青山に呼び出されることはなかった。そのかわり夜7時に学校前に来いとだけ言われた。彼はその時笑顔だった。彼の周囲の人たちに使うようなものではなく、子供が新しいおもちゃを買ってもらった時のように。 家は余裕をもってつけるように早めに出た。彼は僕に何をするつもりなのだろう。ありえないと思うようなところにまで想像がいってしまったとき、目の前には真っ暗な学校があった。 普段見る学校とは違う。まるで悪魔や幽霊が出てきそうな雰囲気だった。 「やっと来たのか。遅いぞ。」 「まだ7時ではないよ。」 「それもそうだな。」 彼はケラケラと笑っている。なぜこんなにも上機嫌なのだろう。僕は腑に落ちないまま、校庭の方に自然に目が向いていた。僕は自分の目を疑ってしまった。そこにはなぜか、炎が見えた。それは高校生の悪ふざけですむが、縛り付けられている人を複数名で暴力を振るっているとなると話は別である。 声が震えながらなんとか彼に尋ねた。 「なんであそこで人が殴られてるんだ?」 彼は校庭の方に目をやり、にやりと笑った。 「あれは俺を殴った馬鹿だよ。ああなって当然さ。俺を殴ればどうなるかが身にしみて分かっただろうな。」 彼はそこで言葉をきり、聞き返した。 「どうだ?お前をいつもあんな風に殴っているが、第三者の立場になったとき、どんな気分だ?」 痛いところを突かれた気がした。一番最初に出てきた感想は滑稽だと思った。だけど、僕は、周りからはそう見えていると理解し、なんとも言えない気分になった。 僕がうまく答えられずにいると、彼は僕に今日はもう帰っていいと言い、校庭の方に歩いて行ってしまった。 僕は大人しく帰り、シャワーを軽く浴びてベットに倒れこんだ。考えたくもないことを放棄すると、少しずつ瞼が落ちていった。
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