出会いから終わりまで

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頭に何か冷たいものが落ちてきた。上を見上げると、灰色を黒く塗り潰したような色の空から雨が降ってきていた。 カバンの中から折り畳み傘を取ろうと、後ろに手をまわしたが、チャックを見つけることができない。仕方なく地面に置くと、カバンだと思っていたものは、傷がついた紺色のランドセルだった。 よくよく見ると、僕が歩いている道は当時通っていた小学校に使っていたものだった。 なんでとは思わなかった。多分これは夢だろう。あの学校の出来事から、僕の一番平和だった頃の記憶で塗り潰そうとしたのだろう。しかし、一番幸せだった頃の記憶が、小学校のときの登下校の記憶とは恥ずかしい。だけど、ここには居心地の悪さや、僕を糾弾してくる人はいない。少しだけ。ほんの少しだけ、ここで気を落ち着けたい。僕自身を慰めるために。
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