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「かしこまりました。お言葉の通りに。」 動揺を隠せないまま、それでもなんとか我に帰り、礼儀正しく返答をする。 「詳細は夜だ。8時に私の部屋に1人で来てくれるね?ワインでも飲みながら話そうじゃないか。」 「承知いたしました。」 「では全員、持ち場に戻ってくれ。」 主人がパンっと手を叩けば、4人は再び頭を下げ、部屋を出た。 少し1人になりたくて、一葉はほとんど人が足を踏み入れない裏庭の荒れた場所へと向かう。 雑草だらけの庭には一つ、ポツンと二人がけのベンチがあった。 母親に邪魔者扱いされてこの家に来てから、一葉は割とすぐこの場所を見つけたように思う。 嫌なことがあるといつもここにきていた。今でもそう。見つけた経緯などは覚えていないが、なぜかここにいると落ち着いて。 目を瞑ると爽やかな風が頬をかすめ、自分の隣に誰かいるような錯覚に陥る。 そしてどういうわけか人嫌いの一葉が、その感覚だけは愛することができるのだった。
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