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「あまり大きな声で言える話ではないんだが、実は他に2つばかり家庭を持っていてね。息子は4人いるんだ。」
4人…と言うことはこの人は最低でも7人子供がいるわけか。
人ってわからないものだな…
「失礼いたしました。」
「いや、構わないよ。私は意図的に隠していたのだから。」
いやでも、それにしたっておかしい。だって…
「失礼ながら、もう1つお尋ねしてもよろしいでしょうか。」
「もちろん。そのために2人で話してるのだから。」
「私は、離れに行くと聞いております。」
次期当主が、離れに…?そんなことがあるのだろうか。
「言葉通りだが?」
「いえ、しかし… 」
それはおかしいのでは…、と言いかけて一葉は口を噤んだ。
家のことに口を出すなど仕事の域を超えている。沈黙は金。黙っているのが一番いい。
「かしこまりました。いつ、ご挨拶に伺えばよろしいでしょうか。」
「行く必要はない。紅司、入りなさい。」
突然当主が一葉の背の方にあるドアに向かって大きな声で呼びかけた。
ガチャリ、とドアが開き、コツコツと革靴の音が近づいてくる。
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