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この目…間違いない。先日一葉の蹴った石が当たったひとだ。
どんな不幸な偶然だよと自分の運命を呪いたくなる。これからこの人の専属になるなんて、本当に勘弁してほしい。
「僭越ながら、なんのことでしょう?」
あの暗がりだ。見つめあった時間もそんなに長くない。一葉は何事もなかったように首を傾げた。
「…まあいい。よろしくな。」
握手が解かれる。
まるでわかっているぞというように意地悪く言われ、終わった、と思った。
どこか冷たい黒い瞳は、一葉をまっすぐに見つめている。
今彼が一言でもcommandを発したら、一葉はすぐさま従うだろう。
いっそもう自ら服従してしまいたい。
服をはだけて、
跪いて、
靴を舐めて。
そして紅司もまた、一葉をDomの顔で見つめていた。わずかにglareが漏れていて、一葉はその場から動けなくなる。
彼の唇が開かれるのが、一葉にはスローモーションのように思えた。このまま彼の口からはcommandが…
「今日はもういい、明日は七時に起こしてくれ。」
予想に反し、紅司はあっさりと一葉から目をそらすと、そのままドアの方へ向かってしまった。
「かしこまりました。」
礼をして、その背中を見送る。
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