プロローグ

1/4
前へ
/117ページ
次へ

プロローグ

広く薄暗い倉庫の中、大勢の男達が、ぐるりと何かをとり囲むように立っていた。 その中心で、脱力しきった美しい男が1人、椅子にくくりつけられている。 動けない彼のそばには心配そうな面持ちで寄り添っている、これまた綺麗な男が1人。白い首元には革製の、紅色の首輪がつけられている。 「わんちゃん、ちょーっと俺らと遊ぼうか。」 首輪をつけた男性の方に、ニタニタと下品に笑う男たちが寄ってきた。 「主人が脱力しきって目隠しされてる状態だもんなぁ?いくらDom(サド性)のトップとはいえglare(殺気)さえ封じれば何もできないだろ?」 「主人に危害を加えられたくなければ大人しくしてな。」 「愛染家の跡取りが、妹ごときのためにこのざまか。笑える。」 周りを囲む男たちは楽しそうだった。 数々の罵詈雑言がとめどなく浴びせられる。 Dom性のトップと謳われる愛染紅司は、ここに来てからずっと黙って、男たちの言うことに従っていた。 妹を人質にとられ、薬を飲めば助けてやると言われたから、目隠しをされ、薬を飲んだ。 妹が解放された後も、縄で手を縛られても、椅子にくくりつけられても、何も言わずに。 しかし。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2081人が本棚に入れています
本棚に追加