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第5話 決別
夜が明けて陽が昇っても子猫は傍を離れなかった。首輪は無い。もしかすると、コイツも独りぼっちなのだろうか。それとも捨てられたのかもしれない。自分と似たような境遇に自然と親近感が湧く。
「君も一緒に来るかい?」
顔の位置まで抱き上げて尋ねてみた。返ってきたのは尾の長い、いかにも眠たそうなアクビだ。とりあえず了承を得られたものと解釈して連れて行く事にした。
黒猫はマントの中が気に入ったようだ。僕の肩を占拠するなり、そこで体を丸めた。ゴロゴロと細かな振動が伝わってくる。居心地はそれなりに良いらしい。
こちらとしても道連れがいるのは有りがたい。たとえ会話の出来ない動物であっても、寂しさが紛れるからだ。のしかかる重みを心強く感じつつ、そんな事を考えていた。
「さてと。まずは食料品店に行ってみようかな。十分な量を買えるかは望み薄だけど……」
手持ちの10ディナだけでは、十分な食料を調達するのは難しい。それでも食わない訳にはいかず、店の中へと乗り込んだ。
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