第14話 祭りの後

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「依頼主は犬派ですね。よほどワンちゃんがお好きなのでしょう」  任された犬は総勢12頭。大型で大人しいものから、小型でおてんばなものまで多種多様という感じだ。この集団を半日も世話をしなくてはならないなんて、安請け合いするもんじゃないと早くも後悔してしまう。 「ミクちゃんは隠れててくださいね。ワンちゃんが苦手ですもんね」 「みんみょん」  子猫のミクロがオリヴィエの胸元に潜り込んだ。そしてこれ以降は、襟首から顔を覗かせるだけとなる。よほど犬が嫌いなんだろうなと思った。  こうして散歩はスタートした。まずは住宅街を通り、町外れを目指す。暴れる事を警戒して綱を強く握ったのだけど、その心配は無かった。全員が整然と列を保って進むという、それはもう粛々としたものだった。どうやら躾は万全らしい。  でもそれは長続きせず、町外れの広場へと着いたら状況が一変した。淑女然としたお淑やかさは瞬時に吹き飛び、総員が棹立ちになって暴れ出したのだ。当然、手綱なんか掴んではいられず、その全てを手放してしまった。 「しまった、綱が!」 「レインさん。ご心配なく。あれは遊びたがっているだけですよ」     
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