第16話 冷たい指

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「オリヴィエ! 騙されちゃダメだ!」  急いで店主から引き離し、表の喧騒から逃れる様にして路地裏へと駆け込んだ。辺りは壁一枚隔てたように静けさを保っており、祭りの騒がしさをいくらか遠ざけてくれる。 「レインさん。どうかされましたか? 私は、その、強壮剤を買い求めていただけですが」 「あんなの嘘っぱちに決まってるじゃないか。偽物に全財産をはたかないでよね」 「まぁ! 詐欺行為だというのですか? でしたら警備隊に通報しなくては」 「言っても笑われるだけだよ。もしかしてお祭りに来た事がないの?」 「はい。今度で人生初めてとなります」 「ともかく、こういう日の露店は胡散臭いものがたくさんあるから、騙されない様に自衛するもんなの。用が無いなら見向きもしない事。わかった?」  財布を渡しておくと危険なので、僕がオリヴィエの分まで預かることにした。彼女は交換条件として、祭りの間中は手を繋ぐ事を要求してきた。それが絶対条件なんだとか。財布とどんな因果があるかは分からないけど、結局はお互いが要求を飲んだ形となった。     
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