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耳障りな叫び声をあげて、敵は体を崩壊させた。辺りには緑色の体液が水溜まりのように広がり、灰色の丸い石も後に残される。この石こそがスライムを倒した証であり、素材屋に売ることで資金にもなる。この流れを5回も繰り返せば、当座の食い扶持くらいは稼げそうだ。
「戦えない事も無い……か。じゃあ、もう少し頑張ってみようかな」
探索を続けると、同じようにしてスライムが飛び出してきた。だけど今度は1、2、3匹まとめてだ。それぞれが狙いを定めながら力を溜め始める。
「こ、これは無理だーーッ!」
素早く回れ右、そして逃走した。顔を、脇腹を緑色の塊が掠める。執拗な追撃は何度も続いた。それでも人里に近づくと敵は突然大人しくなり、身を翻して去っていった。まるでテリトリーのようなものを気にしたかのように。人気(ひとけ)の無い場所でしか襲われないのは故郷と同じだった。これはもしかすると、万国共通のルールなのかもしれない。
数十歩も歩けば町、という場所までやってきたけども、このまま帰る訳にはいかない。スライムの核ひとつでは1食分にもならないからだ。住民の冷たい視線から逃げるようにして、再び草原地帯へと舞い戻った。
「襲われてからじゃ遅い。何か工夫をしないと体が保たなそうだね」
先手を取られ続けたせいで手傷を負ったし、最終的には逃げ回るハメになってしまった。つまりは、最初から不利な状況で戦っていた事になる。そうならない為にはこちらから見つけるしか無い。
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