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返事はない。それどころか姿勢だってそのままだ。もしかしたら聞こえなかったのかもしれない。
「あの、すいませ……」
「うっせぇんだよボケカスッ! こちとら休憩中なんだぞ湾に沈められてぇかゴミ野郎!」
「ヒッ!? ご、ごめんなさいッ!」
僕は言葉で殴られた勢いで尻餅を着き、そのまま逃げた。我ながら情けない姿だとは思うけど、あんな恐ろしい形相で怒鳴られたら歴戦の猛者でも震え上がると思う。おとぎ話に聞いた邪神が居たとしたら、きっと今みたいな形相をしているに違いない。。
こうなってしまえば途方に暮れるしかなかった。あの人と対話は無理。だからと言って何も知らないままで白い世界を冒険する訳にもいかない。やった事と言えば、彼女とそこそこの距離を取り、息を殺し続けたくらいだ。
ーーピピピッ ピピピッ。
鳥の鳴き声のような音を聞いた。甲高くて抑揚の全く無いものだ。女性もそれを耳にしたらしく、気怠げに立ち上がると腰を拳で叩きながら言った。
「あぁーー、クッソだりぃ。永遠に昼休みが続きゃ良いのにふざけんなよマジで。クァーーッ!」
大口を開けて長いあくびをしたかと思うと、僕の方へ向かってゆっくりと近づいてきた。
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