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「気に食わんか? だったら帰れ」
「そんなぁ……」
「売るか消えるかサッサと決めろ。さもないと衛兵に突き出すぞ!」
僕は泣く泣く核を売り渡した。この町に素材屋はここ一軒しかないので、別の店に相談する選択肢なんか無いからだ。背に腹は変えられないとはこの事を言うのだろう。
清算し、投げつけられる様にしてお金を受け取り、急いで店を出た。その間も終始向けられる冷たい視線が刺さる想いだった。
すぐに路地裏へと雪崩れ込み、握りこぶしを開く。赤茶けた銅貨が10枚。命の危険を冒してまで手にした額が、せいぜい一食買える程度とはひどすぎやしないか。視界が徐々に涙でにじむ。こんな扱いを受けるなら、死んだままで居た方がよっぽどマシだと思えてきた。
でも、そんな感情を抱いててもお腹は空く。何かに配慮でもしたかのようなか細い音だ。卑しさという言葉を胸の奥にしまい込み、冷えきった晩餐会を開く事にした。
朽ちかけた木箱に腰を降ろし、袋からパンと干し肉を取り出す。まともに稼ぐアテは潰れた。これを食べてしまえば、いよいよ食うことにさえ困るハズだ。
「明日からどうしよう……」
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