報告書A 箱庭プラネッツ

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 それにしてもだ。専門部署から技術的なサポートを見込めないとあっては、これら全てを読み解く必要がある。山を切り拓かなくてはならない。十分な知識も根気も足りない、この私がだ。なのでこうしてシステム開発部に問い合わせているけれど、なしのツブテだった。  もう一度かけてみようか……そう思っていると、前触れなしに内線が鳴る。身を乗り出してディスプレイを覗き込むと、そこには課長の名前が表示されていた。反射的に顔をあげると、あの冷徹女が遠くから私を見ているのが分かった。目が合ってしまったからには居留守、いつものトイレ休憩には逃げられない。観念してヌメリ気のある受話器を手に取った。 「お待たせしました、黒羽ですー」 「ショーコ。今日はいつもに増して騒がしいが、どうかしたか?」 「いえいえ。大した事ないですホント」 「デスクで揺らいでる本の数々は何だ?」 「これはですね……しがないオペレーターですが、製品知識を伸ばしてみようかなーなんて」 「まさかとは思うが……次のイベントについて、何か厄介事でも起きたのか?」  やべぇ。この女はマジで鼻が利く。どうにかして取り繕わなくちゃならねぇ。ここで素直に『悪ふざけで救世主役の子に変態なんて役職ふっちゃいましたー、しかもリカバリーできません、どうしましょッ!』などと抜かすほど世渡り下手ではない。     
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