報告書A 箱庭プラネッツ

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「良かった……。データとはいえ、冗談の結果で死なせちゃったら気分悪いもんね」  レイン君を初めとしたハコニワの住民は全て、『箱庭プラネッツ』というオンラインサービス上のデータでしかない。つまり、この世に実在する生命ではないのだ。  とは言っても、まるで生きているかのように動き回るキャラクターは、大きな人気を博した。それで会社は大きな利益を得ているのだけど、管理する私たちは中々に大変だ。業務のストレスも半端じゃない。社員は毎年大量に採用され、それと引けを取らない数が辞めていく。過酷な上に薄給というお役目が、帰属意識を根こそぎ刈り取るからだろう。 「さてと。マジギレしてるみたいだけど、ともかくは落ち着きなさいよねー」  慣れた動きで編集画面を操作し、住民の詳細ページにアクセス。詳細設定から覗き込む。すると、異常に振れた感情値が目に飛び込んできた。数値はほぼ最大。現場は戦争でも起きてるかのような、殺伐とした空気に支配されているだろう。  全てを適正値に戻そうとしたその時、再び内線が鳴った。相手は開発部の真島。私は極めて迅速かつ精密に動いた。それは財布から散らばった小銭を拾う時の様に。 「はい、管理事業部です!」     
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